札幌をもっとおしゃれな街にしたい

僕たちスタイリストには、すべてのお客様に自信を与えてあげられる、美しくしてあげられる力があると思うんです。

SKNOW(スノウ)クリエイティブ・ディレクター 澁谷亮さん

~INTERVIEW~

澁谷さん、まずは学生時代から「SKNOW」の店長になるまでのお話をうかがいます。
「札幌ビューティーアート専門学校」在学中から様々なコンテストに出場し、素晴らしい成績をおさめていらっしゃいますね。
とにかく技術では負けたくない、という気持ちでストイックに向き合っていましたね。
高校時代、サッカー部で鍛えられた「勝ち負けへのこだわり」が染み付いていたんじゃないかな。

カットのコンテストに出始めてからは、「他の人たちが寝ている間に練習すれば勝てる!」と思ったから、睡眠時間を削ってとにかく練習をこなして。
素晴らしい師匠に出会えて、質の高い練習がたくさんできたのが良かったんだと思います。
師匠というのは「CUTCUTJUN」の川根順史さんですね。
そうです。 在学中に師匠の主宰する少数精鋭カットコンテストチーム「川根塾」に入塾して指導を受けました。
卒業後、師匠のサロン「CUTCUTJUN」に入社しようと思ったら、その年は新卒採用をしてなくて。
でも、最初に学ぶ技術が自分のベースとなってこれから先もずっと残るものだと確信してたから、絶対に最高の技術を学びたかった。
それで「無賃無休でいいので、働かせてください」と弟子入りを志願しました。
昔なら弟子入りして住み込みで師匠の技術を学ぶ、という慣習もあったけど、僕たちの時代には無賃無休で弟子入り志願なんてもうあり得ないことだったから、色々な人から驚かれましたね。

「CUTCUTJUN」では、アシスタント時代から学生への指導も行っていたとか。
師匠に同行して、専門学校の後輩たちを指導していました。
他にも全国各地のセミナーに同行させてもらったり、僕よりもずっと上の先輩美容師方の前でセミナーのセクションを任せてもらったり。
それがちょうど20歳の時かな。 アシスタント1年目には到底できない経験をさせてもらって。
その時に学んだセミナーでの話し方や指導の仕方、話を聞く姿勢は大切な財産になっています。
2009年にスタイリストデビュー、その年にSKNOWのオープニングスタッフとして移動。 デビュー1年目で売上ナンバーワンを達成しています。
売上達成のために、どのような工夫をされたのでしょうか?
まず他のスタイリストがやっていないことをやろうと思って。
講習で技術指導するのと同じように、お客様にも「あなたの髪質は○○だから、このように切るとはねなくなるよ」という感じで、細やかに説明しながら施術をして、お客様ご自身にもわかってもらうようにしました。
「こういう髪型にしたい」という要望があった時も「顔立ちや髪質、なりたい女性像に合わせるなら、こうした方がバランスがいいですよ」と理解してもらえるように丁寧に話をする。
このやり方は今でも変わらないですね。
長年通われているお客様もたくさんいらっしゃると思いますが、どういったオーダーが多いですか?
やっぱりショートスタイルやボブスタイルが多いかな。 今まで色々なサロンへ行ったけど上手くまとまらないので何とかしてほしい、とか。
「おまかせ」の人も多いです。
「おまかせ」にできるというのは、お客様に信頼されている証拠ですよね。
うーん、どうなんですかね。 感覚で「こういうスタイルがいいよ」と言うわけではなく、ちゃんと理由を説明するからかもしれないですね。
それと、お客様のファッションから「なりたい自分像」をピックアップしてテイストを合わせていくことを大事にしていて。

「Hairstyle inspired by
fasion」というSKNOWのコンセプトのひとつで、ヘアスタイル単体ではなくファッション、トレンドや女性像からヘアスタイルを考えるんですよね。
そのために、SKNOWのスタッフは厳しい技術指導に加え、ファッション、トレンドに関する勉強も行っています。
技術指導の話が出たところで…専門学校の先生も務めていらっしゃるんですよね。 具体的にはどのような指導をしていらっしゃるんでしょうか?
国家試験のための実技や筆記の授業ではなくて、現場の楽しさを知ってもらうためのリアルな授業を担当しています。
今の現場で流行っているものとか、自分が海外で学んできたVIDALSASSOONの技術とか、サロンワークに近い授業ですね。
SKNOWの店長になって2年目で、ロンドンVIDALSASSOONに入学されたんですよね。
本場VIDALSASSOONで学んでみたいとずっと憧れていたので念願の渡英でした。
でも、行ってみたらデザインに対しての考え方や技術の高さ、クリエィティブな発想力は感じましたが、
土台となるベーシックな技術は手の届かないレベルには感じなかったんですよね。 なぜかというと
CUTCUTJUNはVIDALSASSOONロンドン認定CLUBSALONであって、
日本で受けてきた教育がロンドンで学ぶことと大きく変わりなかったんです。
カットのルーツであるVIDALSASSOONの技術を日本にいながら学ばせてもらえた 環境に感謝しましたね。 そして自信にもつながりました。

欧米の感性には学ぶところも多いですが、東洋人と西洋人では骨格も髪質も異なるので、向こうの技術はそのままでは日本のサロンワークに活かしにくいんですよね。
その違いがわからないまま海外ベースで学んでしまうと、帰国してから結構大変かも。
だから海外留学は先の目標を見据えて行った方がいいですね。 日本で活躍するために海外に行くのか、海外で仕事をしたいのか。
前者なら日本である程度勉強してから行った方がいいし、後者なら若いうちに飛び出した方がいい。
専門学校や現場で若い世代を指導をしていて、思うことはありますか?
そうですね……昔に比べて今は「見て学ぶ」機会は多いんですよね。 YouTubeとかInstagramとか。
たくさん見ているから好きなものに関してのセンスはいい。 でも圧倒的に経験値が少ないのに、見ているだけで「できた気」になっている子も多いです。
学校ないし現場で、どう経験値を積ませるかが今後の課題になると思います。
見て学んだものを、実際自分の手でやってみたらどうだったのか、そこまで検証できれば今まで以上に質の高いスタイリストがたくさん出てくるんじゃないかな。
カットセミナー講師として全国各地を見てきて、札幌と東京、その他の地方の違いは感じますか?
東京の人たちはやっぱりモチベーションが高いですね。 自己アピールも見せ方も上手で、「自分たちが最先端」という自信を持っているように感じます。
ただ、デザイン力や技術面においては札幌を含めた地方の人が劣っているということはまったくないと思います。
むしろコンテストとかでは地方の都市の方もいい成績を残しています。 だからこそ「東京がすごい、追いつかなきゃ」じゃなくて、逆に北海道から発信してきたい。

札幌を東京や他地域から一目置かれる街にしたいんです。
ヘアスタイルだけじゃなくて、ファッションやライフスタイルすべて含めて「札幌っておしゃれな街だよね」、「美容の街だよね」と思われるようになれば、そういったモノやサービスを求めて人が集まります。
元々札幌って街として人気があるじゃないですか。 気候風土がよくて食べ物も美味しい。
それにファッションやヘアなど美容が付随すれば、さらに魅力的な街になると思います。
SKNOWでは新しい試みをされているようですが。
今、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、これまでのように自由に出かけられない、オシャレをする機会も減っている状況ですよね。
だからこそ、髪を切ることをイベントとして楽しんでもらいたいと思っています。

そこで、SKNOWでは本格的なフォトブースを作っています。
お店に来てくれたお客様の写真をプロ機材で撮ってあげたり、自撮りしたりできるようになっています。 そのデータはお客様に提供します。
カットしたばかりのヘアスタイルを、フォトジェニックなブースで撮影できたら嬉しいかなと。 友だちと一緒に来てもらって、友だち同士で撮影を楽しむのもOK。
髪を切るだけじゃなくて、写真を撮るという目的がひとつ増えることでイベント感は増しますよね。
写真を撮るなら服もメイクもちゃんとしなきゃ! と気合が入りますね。
そうですね。 トータルで美意識の向上になると思います。 ヘアサロンに行く時にはおしゃれをしていった方がいいんです。
「気合を入れているみたいで恥ずかしい」と思う人もいるかもしれませんが、別にドレスアップしてというわけではなく、自分の「好き」が伝わるおしゃれをしてきて欲しいということなんです。

スタイリストはお客様が身につけている服や靴やアクセサリー、メイクの雰囲気から、口では伝え切れないそのお客様の好みなどを感じ取るので、ちゃんとおしゃれをして行った方が結果的にベストなヘアスタイルに仕上がると思います。
ファッションもメイクもヘアも完璧に仕上がったら、気分よく胸を張って歩けると思うんですよね。 自分に自信を持っている人がやっぱり魅力的に見えますよね。
そう考えると、僕たちスタイリストには、すべてのお客様に自信を与えてあげられる、美しくしてあげられる力があるんですよね。


PROFILE

澁谷 亮(しぶや りょう)
1984年生まれ。
札幌ビューティーアート専門学校卒。 CUTCUTJUNでスタイリストデビュー。
その後、SKNOWの店長。 資生堂プロフェッショナルのSPI講師(最高ランク契約講師)として契約を結び全国へのカットセミナーをスタートする。
28歳の時にロンドンVIDALSASSOONへ入校、ディプロマを取得。
株式会社ロスエンタテインメントの取締役。 札幌ビューティーアート専門学校スタイリストコース講師。 同校の2年生を対象に澁谷塾を開催。
SKNOWでサロンワークを務める傍らセミナー講師、ブライダルやモデル事務所なども手掛けている。

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